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ハリガネムシ

ハリガネムシ

 

今回は寄生虫についての話題です。

ハリガネムシについて

ハリガネムシは細い糸のような形状をした寄生虫であり、主にカマキリやバッタなどの昆虫に寄生して、宿主の脳を操って水に飛び込ませる生態で知られています。ミミズなどとは異なり体に伸縮性がなく、のたうち回るような特徴的な動き方をする。体は左右対称で、種類によっては体長数 cmから1 mに達し、直径は1 – 3 mmと細長い。内部には袋状の体腔がある。表面はクチクラで覆われていて体節はない。また、クチクラで覆われているため乾燥すると針金のように硬くなることからこの名がついた。

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<カマキリ>

前脚が鎌状に変化し、他の昆虫などの小動物を捕食する肉食性の昆虫である。ハリガネムシの宿主とされることが多い。


<ハリガネムシがカマキリの体外へ出る動画>



ハリガネムシは他のすべての動物に存在する遺伝子を失っていることが判明

 

ハリガネムシの中でも遺伝的に遠く離れた2つの種を調査した結果、他のすべての動物に存在する「繊毛」という細胞小器官を発現する遺伝子が、ハリガネムシには欠けていることが判明しました。

【参考文献】

Rampant loss of universal metazoan genes revealed by a chromosome-level genome assembly of the parasitic Nematomorpha: Current Biology
https://doi.org/10.1016/j.cub.2023.07.003

“Mind controlling” parasitic worms are missing genes found in every other animal – Field Museum
https://www.fieldmuseum.org/about/press/mind-controlling-parasitic-worms-are-missing-genes-found-in-every-other-animal

Mind-Controlling Worms Are Missing a Feature Common to All Other Animals : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/mind-controlling-worms-are-missing-a-feature-common-to-all-other-animals

Missing genes in ‘mind-controlling’ worms pose an evolutionary puzzle | CNN
https://edition.cnn.com/2023/07/18/world/horsehair-worms-parasites-missing-genes-scn/index.html

自然界にはさまざまな生態を持つ生物が存在していますが、その中でもハリガネムシは特に奇妙な生き物のひとつです。ハリガネムシは体長数cm~1mの非常に細長い形状であり、排せつ器、循環器系といった器官を持たず、カマキリやバッタといった陸生昆虫とゲンゴロウなどの水生昆虫に寄生して一生を送ります。

ハリガネムシの卵は水中で孵化し、まずは水生昆虫に寄生します。その水生昆虫が羽化して陸上を飛ぶとカマキリなどに食べられたり、何らかの理由で幼生や休眠状態のまま草ごとバッタなどに食べられたりすることで、今度は陸生昆虫の体内に寄生するとのこと。陸生昆虫体内で成体となったハリガネムシは、水の反射光に含まれる「水平偏光」を検出する能力を操作し、自らが繁殖を行う水に飛び込ませるのです。

フィールド自然史博物館の博士研究員で論文の筆頭著者であるタウアナ・クーニャ氏は、「ハリガネムシについて最もクールでよく知られていることのひとつは、宿主の行動に影響を与え、寄生されていなければやらないような行動をさせることです」と述べています。

これらのハリガネムシの奇妙な生態についてはよく研究されているものの、ハリガネムシの遺伝的な研究はそれほど進んでいないとのこと。そこで、クーニャ氏らの研究チームはハリガネムシと他の動物の間の進化的関係について知るため、淡水性のハリガネムシであるAcutogordius australiensisと、海水性のハリガネムシであるNectonema munidaeのDNAを採取し、それぞれのゲノム配列を決定する研究を行いました。

分析の結果、ハリガネムシの中でも遠く離れたこれら2種には、すべての動物に存在すると思われていた遺伝子セットのうち、約30%が欠けているという共通点があることが判明しました。2種において欠けている遺伝子群はほとんど同じであり、この欠落は研究チームのミスや偶然で片付けられるものではなかったとのこと。

ハリガネムシに欠けている遺伝子群が他の動物でどのような機能を担っているのかを調べたところ、これらの遺伝子群は細胞小器官のひとつである繊毛の発達に関わっていることがわかりました。繊毛は非常に多くの動物細胞に存在しており、人間の精子細胞や網膜細胞にも繊毛は存在しています。クーニャ氏は、「繊毛は細胞レベルの小器官で、基本的にすべての動物に存在しており、さらに原生動物や一部の植物、菌類にも存在しています。要するに地球上の多種多様な生命に存在しているのです」とコメントしています。

研究者らは過去の研究から、ハリガネムシの精子細胞などには他の動物で見られる繊毛が失われていることを発見していましたが、それは遺伝子を持っていないという証拠とは見なされませんでした。クーニャ氏は、「以前の観察ではハリガネムシに繊毛があるように見えませんでしたが、確かなことはわかりませんでした」「今回ゲノムを解析したところ、他の動物にある繊毛を発現する遺伝子がないことがわかりました。つまり、そもそも繊毛を作る機構を持っていないのです」と述べました。

宿主に寄生する生物は生存に関するさまざまな行動を宿主に依存しているため、他の動物には存在する器官が欠落していることがよくあります。しかし、ハリガネムシ以外の寄生生物で繊毛を発現する遺伝子を持つものもたくさん存在するため、ハリガネムシに見られる遺伝子の欠落が昆虫に寄生する生態のためとは言い切れないとのこと。その一方で、2種の遺伝的に離れたハリガネムシで共通の遺伝子が欠落していた点は、ハリガネムシの進化のかなり早い段階で欠落が生じた可能性が高いことを示唆しています。

 

それではまた。。。




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