「恐怖度☆☆☆☆★」カテゴリーアーカイブ

ザ・ブルード 怒りのメタファー

ザ・ブルード 怒りのメタファー

 

今作製作中クローネンバーグ監督は最初の妻と娘の親権を巡り泥沼の離婚劇を繰り広げており、作品にもその影響が色濃く出ている。

ブルード

意味:同腹児とされる。

メタファー
隠喩暗喩とも呼ばれ、伝統的には修辞技法のひとつとされ、比喩の一種でありながら、比喩であることを明示する形式ではないものを指す。メタファーは、言語においては物事のある側面をより具体的なイメージを喚起する言葉で置き換え、簡潔に表現する機能をもつ。わざわざ比喩であることを示す語や形式を用いている直喩よりも洗練されたものと見なされている。

 

作品紹介
ザ・ブルード 怒りのメタファー
  • 1987年アメリカ映画
  • 監督:デヴィッド・クローネンバーグ
  • 製作:クロード・エロー
  • 出演:オリヴァー・リード、サマンサ・エッガー、アート・ヒンデル、ヘンリー・ベックマン、ナーラ・フィッツジェラルド、スーザン・ホーガン、シンディー・ヒンズ、ゲイリー・マッキーハン、マイケル・マギー、ロバート・A・シルバーマン、ラリー・ソルウェイ、ニコラス・キャンベル

<ストーリー>

幼少期に受けた虐待が原因で神経症を患うノーラは医師ラグランの診療施設に入院する。しかしノーラの夫フランクは彼女を隔離し面会させないラグランに不信感をいだく。一方、ラグランは人間の怒りを実体化する実験を行なっていた。ノーラの体にできた腫瘍から異形の群れが現れ、やがて復讐を開始。ノーラとフランクの娘キャンディスにも危険が迫る。

 

AmazonPrimeで映画を視聴する
U-NEXTで映画を視聴する

 

登場人物

【カーベス家】

フランク・カーベス

カーベス家の父。不動産の施工会社に勤務している。娘キャンディスとの入浴中に彼女の背中に痣を発見しており、妻ノーラが虐待したと思いキレていた。妻ノーラのいるハルの元へ行き娘キャンディスが妻ノーラより虐待を受けて背中に痣があるため毎週末にする面会を辞めさせろと申し出ている。ハルに対して妻ノーラとは虐待のために法廷で親権を争うと告げている。弁護士に親権の相談をしている。ジュリアナのところへキャンディスを連れて行き仕事中は預けていた。マーチより78分署に呼ばれジュリアナの死とキャンディスが事件現場にいたと知らされている。78分署ではバーキン医師からもキャンディスが精神衰弱していると説明を受けていた。78分署からキャンディスを引き取って家で虐待の証拠として背中の痣をカメラ撮影している。ジュリアナの葬儀のためこちらに来たバートンを空港で出迎えている。弁護士の紹介経由でジャンを紹介され、彼の住み家を訪れている。キャンディスがルースを夕食に誘ったために自宅で夕食を共にしたが、途中でバートンより号令がかかりジュリアナの家へ向かうも彼を死体として発見した際に一緒にいたブルードに襲われるも、ブルードが勝手に死んだためマーチ警部を呼んで遺体を解剖してもらって説明を聞いている。キャンディスを小学校へ送り届けたあとにブルードに襲われて殺されたルースの死体を目撃している。キャンディスがルースの死体を発見した時点で行方不明となっていたためマーチを呼び出して捜索している。ソマフリー研究所の近くの小屋から出て来たハルを捕まえて、キャンディスが行方不明となった経緯を説明している。ハルがキャンディスを屋根裏から救出するとのことで協力して1Fにいるノーラに和解の説得をしている。ノーラが勘づき娘キャンディスだけを連れ戻すなら娘キャンディスを殺すと言い出したため絞殺している。最終、キャンディスをソマフリー研究所の小屋から助け出している。

引用元:https://www.youtube.com/watch?v=nCyE2QxDEVg

ノーラ・カーベス

カーベス家の母。目を見開きキーキーとすぐキレるイカレ女。精神疾患でハルのいるソマフリー研究所で”サイコ・プラズミックス”という治療で超能力研究のモルモットにされている。隔離療法も受けている。幼少期に体に大きなデキモノ(正体は不明であったがおそらくブルードの初期症状)ができて病院に入院している。勘の良い女で自宅にいたルースと電話が繋がり電話越しに「クソ女」と罵っている。終盤に訪れたフランクと和解の対話を持ち出されたが疑心暗鬼に対応した上で腹部のデキモノを見せている。腹部のデキモノを噛み切ってブルードの胎児を取り出して見せている。フランクが自分ではなく娘のキャンディスを連れ戻すためだと勘づきキレまくっていた。最終、フランクに娘キャンディスを殺すと言ったため、フランクから絞殺されている。

引用元:https://www.youtube.com/watch?v=nCyE2QxDEVg

キャンディス・カーベス

カーベス家の長女。5歳。父フランクと入浴中に背中にある痣を発見されている。祖母ジュリアナの所へ父フランクが仕事に行くために預けられたが、ブルードによってジュリアナがキッチンで殺されて死体として横たわっているところを目撃しており、ショックで2階へ行き寝ている。パトロール中の警察に発見され78分署で保護されている。父フランクにより家へ連れて帰られている。小学校教員のルースを夕食に誘っている。小学校の教室で授業前にブルード2人に連れられてソマフリー研究所の近くの納屋へ拉致されている。最終父フランクにより納屋から救出されたが、ストレスからか右腕にイボが出来ていた。

引用元:https://www.youtube.com/watch?v=nCyE2QxDEVg

【ケリー家】

ノーラの両親。10年前に離婚している。

バートン・ケリー

ノーラの父。喫煙家。アル中。政府の仕事をしている。娘のノーラ曰く、ジュリアナから虐待を受けている時に止めようとしなかったとされている。ジュリアナが死んで葬式に参加させるため、娘ノーラのいるソマフリー研究所へ向かい待ち伏せしてハルへ面会させろと申し出たが拒否されている。受付に電話番号を渡しており、その番号へ明日の午後までに連絡するようハルへ指示していた。夜に酔っ払ってフランクへソマフリー研究所へ乗り込むと電話して無理やり号令をかけている。ジュリアナの寝室のベッドで横になろうとした際にベッドの下に隠れていたブルードによりクリスタルの置物で頭を殴られて殺されている。

引用元:https://www.youtube.com/watch?v=nCyE2QxDEVg

ジュリアナ・ケリー

ノーラの母。アル中。親はアリゾナにいて、妹はバンクーバーにいる。過去に娘のノーラから殴られたり、階段から突き落とされたと嘘の証言ばかり言われていると話している。ブルードが家屋に浸入してきて肉叩きハンマーで殴り殺されている。過去にノーラの幼少期に腫瘤で病院へ入院した際に見舞いに行っていたと語っていた。

引用元:https://www.youtube.com/watch?v=nCyE2QxDEVg

【その他】

ハル・ラグラン

精神科医。ノーラの主治医でもある。”サイコ・プラズミックス”という治療法を行ってノーラを超能力研究のモルモットにしている。序盤でマイクと”サイコ・プラズミックス”によるセラピーの寸劇をしていた。ソマフリー研究所を経営しており、そこで精神疾患の患者27名の治療をしているとされる。”怒りの形”という本の著者でもある。精神疾患の患者に対して催眠療法を相手役になりきって行う事が多い。ブルードの存在は研究上ノーラの子であると認知していたが、ブルードが人間を殺しているとは知らなかった。フランクの依頼もあり、終盤に捕らわれの身となったキャンディスをブルードたちから救い出したが、ブルード達に集団で噛みつかれて殺されている。銃を5発発砲していた。

引用元:https://www.youtube.com/watch?v=nCyE2QxDEVg

ルース・メイヤー

小学校教員。キャンディスの担任。喫煙家。最近キャンディスが2人きりになると母娘ごっこをしたがるため母親の存在が必要であるとキャンディスに誘われた夕食の場でフランクに話している。フランクにやや気がある。フランクから急遽留守番を頼まれたため待っていたが、たまたまノーラからの電話に出てしまい「クソ女」とノーラから罵られていた。フランクが自宅へ戻ってすぐに帰っている。授業中に生徒に紛れたブルード2人にハンマーで殴り殺されている。

引用元:https://www.youtube.com/watch?v=nCyE2QxDEVg

マイク・トレラン

別名:ミッシェル。ファザコンのゲイ。序盤でハルと”サイコ・プラズミックス”によるセラピーの寸劇をしていおり上半身裸になって全身に潰瘍が出来ていた。寸劇により、過去に父親から性的虐待を受けていたと考えられる。父親からは捨てられたとされる。ソマフリー研究所を強制退院させられた時に居心地が良かったのかクリスへソマフリー研究所から移動したくないと申し出ていた。退院後はジャンと同じ住居へ引っ越してきておりフランクと会い、ノーラの事について話している。ノーラの事を女王蜂と例え、”サイコ・プラズミックス”を立証する材料であると語っている。フランクからノーラの事を聞かれ、ソマフリー研究所は閉鎖されたがノーラはそのままであると話した。別の日にフランクの家へ訪れ、ハルのソマフリー研究所を閉鎖した理由としてブルードについて話をしていた。

引用元:https://www.youtube.com/watch?v=nCyE2QxDEVg

ジャン・ハートグ

弁護士経由でフランクが紹介された男。体内のリンパ液を循環させるため寝転がる運動をしていた。床を第二の心臓と例えている。過去、ハルの患者の1人で”サイコ・プラズミックス”の影響で喉に大きなリンパ肉腫がある。転移するリンパ肉腫のため毎日薬を飲んでいる。ハルへリンパ肉腫が出来た事の復讐のため訴訟を起こしている。訴訟でハルに勝つのが目的ではなく、”サイコ・プラズミックス”を取り沙汰されるのを目的として被害者の会を今後作る事を考えており、フランクに協力している。マイクが同じ住居へ退院後に引っ越してきたためフランクへ情報提供をしている。

引用元:https://www.youtube.com/watch?v=nCyE2QxDEVg

クリス

ハルの助手。ソマフリー研究所の受付も行っている。序盤の寸劇の司会進行役として客を誘導している。ハルが27名の精神病患者をソマフリー研究所から強制退院させるよう指示したため対応していた。ノーラを起こしたり、街へ買い物へ出たりしている。

引用元:https://www.youtube.com/watch?v=nCyE2QxDEVg

バーキン

精神科医。キャンディスがジュリアナの死体と一緒にいた後に保護されて精神鑑定している。フランクへキャンディスが犯人を目撃しているためストレスで睡眠障害と記憶障害いう神経衰弱の症状が出ていると78分署で説明している。

引用元:https://www.youtube.com/watch?v=nCyE2QxDEVg

インスペクター

ブルードの死体を解剖して特徴を話している。

引用元:https://www.youtube.com/watch?v=nCyE2QxDEVg

マーチ

無能警部。78分署所属。フランクを警察署へ呼び出してジュリアナの死体を発見した経緯とキャンディスを保護している事を説明している。後日、フランクによりブルードを発見したと通報を受けて小さくて見つけられなかったと言い訳をしていた。スペクター医師の解剖に立ち会っている。後日、フランクから呼ばれ入院前に生活していたノーラの部屋を家宅捜査協力をしている。

引用元:https://www.youtube.com/watch?v=nCyE2QxDEVg

テリー

ビルの建築現場の監督者。フランクより施主が5月に引っ越したいと言っていると聞かされている。フランクへ配管許可が遅れているため6月中旬でないと引っ越せないと返答している。

引用元:https://www.youtube.com/watch?v=nCyE2QxDEVg

ウェンディ

他の小学生徒の母親。フランクと校門付近で挨拶しており、それなりに仲がいい。ルースがブルードに襲われたと男子生徒が出来て助けを叫んでいたところに同席していた。

引用元:https://www.youtube.com/watch?v=nCyE2QxDEVg

【奇形児】

ノーラの怒りの感情で腹部の瘤より産まれた奇形児たち。

ブルード/同腹児
ノーラが産み出した奇形のガキ集団。人間の言葉を話さず「ギャー」や「ガー」としか発声しない。ソマフリー研究所の小屋の屋根裏に集団でいる。ノーラの怒りの感情でコントロールされており、怒りの対象にある人間を殺しに向かう。作中ではジュリアナ、バートン、ルース、ハルを殺している。ノーラをフランクが殺したため全員意識を失い死んでいる。

引用元:https://www.youtube.com/watch?v=nCyE2QxDEVg



 

 

豆知識
サイコプラズミクス

ハル・ラグランの発明した精神障害者を対象とした治療法。患者の肉体に生理学的な変化を催させることで抑圧された感情を解放するというもの。作中では不安や怒りで過度のストレスがかかった精神患者の体に瘤や発疹が出来ている。特にノーラは特殊で肥大化した腫瘤から子供を生み出してブルードを量産していた。

ゲストルーム

キャンディスが序盤でいた部屋はG-5である。

キャンディスのお気に入りのおもちゃ

クジラのおもちゃである。入浴の際に手に取っていた。

ジュリアナの親族が泊る予定のホテル

パークプラザである。

【ブルードの特徴】

  • 目に異常があり、虹彩はあるが網膜がない
  • 視界はゆがんで白黒の世界で色の識別は無理である
  • 上唇はひどい口唇裂であるが口蓋はある
  • 舌は厚すぎて喋れず
  • 歯はないが歯茎でかじられたらひどいダメージを与えられる
  • 肩甲骨の間にある肉のコブが空っぽになると死ぬ
  • 外的奇形で性器がない
  • お産によって分娩されていないためヘソがない

※肩甲骨の間にある肉のコブは生命維持の栄養素が中に入っていて魚の液嚢やラクダのコブのようなものである

 


おまけ

 

製作における脚本の背景

クローネンバーグ監督は『ザ・ブルード』を振り返り、構造の点では自作の中で最も古典的なホラー映画だと思うと述べた。クローネンバーグ監督が本映画の脚本を思い付いたのは妻との離婚の後のことだった。離婚協議は苛烈を極め、娘の監護権を巡って争うという苦々しい経験をした。離婚の最中、クローネンバーグは『クレイマー、クレイマー』という映画 (こちらも1979年公開)の存在を知り、その映画で離婚後の家庭崩壊が楽天的に描写されることに幻滅した。それに呼応して、クローネンバーグ監督は『ザ・ブルード』の脚本を執筆し、離婚した夫婦が自分の子供を巡って争う様を描写しようと熱望した。

製作における撮影地

『ザ・ブルード』の主な撮影は1978年11月14日にオンタリオ州トロントで開始された。撮影は12月中も続いた。トロントの北にあるコートライト保護センター (英: The Kortright Centre for Conservation) はソマフリー研究所として使用された。追加の撮影がミシサガで行われた。映画の予算は約150万カナダドルだった。

エッガーは製作スタッフたちが非常に賢かったと記憶していた。エッガーの撮影の際、エッガーの周囲にいたスタッフは7人程度だったが、その多くが大学人でPh.D.の学位を持っていた。エッガーの撮影は3日間にわたって行われた。ノーラが産み出した異形の子供たちは、トロントに住む子供の体操選手たちが演じた。

『ザ・ブルード』はハワード・ショアが最初に作曲を担当した映画だった。ショアの作品は、新ウィーン楽派アルノルト・シェーンベルクアルバン・ベルクアントン・ヴェーベルンを思わせる室内オーケストラの楽曲である。ショアの曲はプロの演奏家にとっても演奏が難しく、高度な技術が要求される。ショアはクローネンバーグ映画の作曲を何度も担当しており、1作を除いてすべて担当している。

公開について

『ザ・ブルード』にはアメリカ合衆国での劇場公開に際してR指定が要求されたカットが存在した。ノーラが産んだ新生児を舐める場面である。この場面はエッガーが思い付いた。当時、犬を飼っていたエッガーはこの場面について、猫や犬は自分の子供が産まれるとすぐにその子供を舐めることを思い浮かべた。

このクライマックスの場面が検閲された際、クローネンバーグによると、映画を見た多くの人はノーラが新生児を食べたのだと勘違いしたという。

 

恐怖度

☆☆☆☆★

<感想>

ノーラの腹のデキモノから胎児が出る表現がグロくてクローネンバーグ監督らしい表現ですね。キャンディストラウマなるやろw



 

他の作品を見る>>